書籍紹介 | 3000万語の格差 | 親の言葉が子どもの脳を育てる

0~2歳前後の子どもといるとき、「どんな風に話しかけて良いかわからない」なんて思ったことがある人は多いのではないでしょうか?

相手は言葉を理解しているかもあやしい。こちらが何か言っても伝わらないかもしれない。そして、子どもがきちんと理解してくれないとイライラする……。

そんな人にはぜひ本書を読んで、子どもに言葉をかけることの大切さを知って欲しいと思います。大切なことは、自分が言ったことを子どもが理解することではなく、子どもが興味を寄せているものに一緒に注目し、多様な表現で子どもに言葉を送ることです。

何について書かれた本か?

本書は、親の言葉が子どもの脳の成長に及ぼす影響について書いた本です。親が実践すべきことと、その背景にある理論、研究がわかりやすく整理されています。

どんな人の役に立つ本か?

子どもを育てているが、どんな風に子どもに話したらいいかわからない人には、本書が参考になることは間違いないと思います*1。また、保育者にとっても、子どもの成長を促すための話し方を学ぶために、本書は非常に有用です。

書いた人は?

この本の著者であるダナ・サスキンド氏は、小児人工内耳外科医として、耳の不自由な子どもに人工内耳を取りつける手術を行っていました。その中で、手術時点ではほとんど同じような聴力の状態であったのに、手術後の状況が全く正反対、つまり、ある例ではコミュニケーションに難がないのに、別の例ではコミュニケーションがうまくいかない事例に出会いました。

この原因を探るために、著者は社会学者に転身しました。社会学者として学ぶ中で、「3000万語の格差」を導き出したハートとリズリーの研究に出会い、本書が生まれるに至りました。

本の概要

本書の題名にある「3000万語の格差」とは、4歳時点において子どもが保護者から聞く言葉の数の差のことを指します。専門職の家庭(収入の多い家庭)の子どもは、生活保護世帯(収入の少ない家庭)の子とくらべて、4歳時点で「3000万語」も多い言葉を聞いていると著者は述べています。

また、言葉の量だけでなく質についても、注目すべき点を著者は指摘しています。専門職についている家庭の子どもは、肯定的・応援の言葉(「いい子だ」「その通り」)を生活保護世帯の子どもよりも多く聞いているうえに、否定・禁止の言葉(「ダメな子」「間違ってる」)を聞く回数は少なくなっているのです。4歳時点で比べると、専門職家庭の子は生活保護世帯の子どもに比べ、肯定的な言葉を約56万回多く聞き、否定的な言葉は12万回少なく聞いています。

そして著者の研究結果として、次のことがわかりました:

  • 3000万語の格差は子どものIQや学ぶ能力に差を生む
  • より多くの言葉を聞いた子どもは、IQや学ぶ能力が高い

こうした研究から著者は、言葉の量と質に注目し、「3000万語イニシアティブ」プロジェクトを開始しました。プロジェクトでは、保護者が実際に子どもに対して言葉を向けるにあたって意識すべきことを「3つのT」として紹介しています。

本書で紹介されている「3つのT」とは、”Tune In” , “Talk More” , “Take Turns”の3つである。簡単に紹介します。

Tune In(チューン・イン):子どもが集中している対象に保護者が気づき、適切な場合にはその対象について子どもと一緒に話すこと。

Talk More(トーク・モア):子どもと話す保護者の言葉を増やすこと。単語の数だけでなく、どんな単語を使うのか、単語をどのように言うかも大切。

Take Turns(テイク・ターンズ):子どもを対話のやりとりの中に引きこんでいく方法。チューン・インし、トーク・モアをした後に、保護者は子どもが反応するまで「待つ」。

本書では、「3つのT」の実践会話例もいくつか出ています。冒頭で書いたように、子どもとどうやって話したら良いかわからない人は、ぜひ実践会話例に目を通してください。「こんなに話すの!?」というおどろきとともに、自分がいかに子どもに言葉を向けていなかったのか、思い知らされます。その反面、「幼い子どもにもこれだけの言葉のシャワーは有効なんだな」、ということもわかります。

便利なツールである「3つのT」が書いてある第5章に加えて、その前の第4章「保護者が話す言葉、そのパワー」をじっくりと読むことも本書の醍醐味です。自己肯定感(内面の満足)に対する言及、子どものグリット(頑張り、辛抱強さ、勤勉、我慢など)の育て方、男女差の原因、などなど、保護者目線で読んでいてとても勉強になります。


自分の言葉が子どもの脳を育てていることに気づかされると、子どもとの会話で言葉を選ぶようになり、自分(大人)の脳もトレーニングをしているように感じます。
豊かな言語表現で大人も子どもも一緒に脳を育ててみてはいかがでしょうか。

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